AMPA受容体リガンド候補化合物TKM-38の不斉合成

イオンチャネル型グルタミン酸受容体 (iGluR) は中枢神経系神経細胞シナプスにあって、ほ乳類の興奮性神経伝達を担っています。私たちの研究室で開発したIKM-159 (1)[1] は、iGluRのAMPA型受容体に選択的に作用するアンタゴニストで、個体レベルではマウスに自発的行動の抑制を引き起こします。IKM-159 (1) はグルタミン酸をその構造に含みますが、興味深いことに、天然グルタミン酸と同じ立体配置の(2S)-IKM-159は神経科学的に不活性であり、神経活性を示すのは (2R) 体であるであることを明らかにしました(2013年に公表)[1]

IKM-159 (1) は3つのヘテロ環を含み、一番下のC環は6員環アミンです。私たちは最近、それを7員環アミンや、7員環エーテルにした類縁体の不斉合成を行い、それらが1に比べて弱い抑制活性を示すことを見いだし、2019年に報告しました[2]

その後、C環を8員環にした類縁体 (TKM-38, 3)[3] の両鏡像体をそれぞれ不斉合成し、それらをマウス脳室内投与により評価しました(活性評価試験の結果は公表前のため、非公開)。

参考文献

  1. (a) Gill, M. B.; Frausto, S.; Ikoma, M.; Sasaki, M.; Oikawa, M.; Sakai, R.; Swanson, G. T., A series of structurally novel heterotricyclic alpha-amino-3-hydroxyl-5-methyl-4-isoxazole-propionate receptor-selective antagonists. British Journal of Pharmacology 2010, 160 (6), 1417-1429. (DOI: 10.1111/j.1476-5381.2010.00784.x)
    (b) Juknaite, L.; Sugamata, Y.; Tokiwa, K.; Ishikawa, Y.; Takamizawa, S.; Eng, A.; Sakai, R.; Pickering, D. S.; Frydenvang, K.; Swanson, G. T.; Kastrup, J. S.; Oikawa, M., Studies on an (S)-2-Amino-3-(3-hydroxy-5-methyl-4-isoxazolyl)propionic Acid (AMPA) Receptor Antagonist IKM-159: Asymmetric Synthesis, Neuroactivity, and Structural Characterization. Journal of Medicinal Chemistry 2013, 56 (6), 2283-2293. (DOI: 10.1021/jm301590z)
  2. Tsukamoto, S.; Itagaki, H.; Miyako, K.; Ishikawa, Y.; Sakai, R.; Oikawa, M., An efficient enantiospecific synthesis of neuroactive glutamate analogs. HETEROCYCLES 2019, in press. (DOI: 10.3987/COM-19-S(F)2)
  3. Morokuma, K.; et al, Manuscript in preparation.

光照射により除去が可能なNPEC基をアミンの保護に用いた有機合成法

アミノ基を持つ化合物は強力な生理活性を示すものが多く、創薬シード化合物として有望です。これを自在に合成するには、必要に応じて保護する戦術が欠かせません。アミノ基を多く含む化合物を合成するときには、多種類の保護基が必要になります。私たちは、UV光の照射により除去が可能なNPEC基の合成化学的な有用性について明らかにし、それをポリアミンの合成に有効活用する方法を開発しました [1]

NPEC基はNPEC-OSu (A1) からNPEC-NHNs (A2) として合成し、保護されたアミノ基として用います。例として、1-octanolと光延反応すれば保護アミンA3が合成できます。

私たちはいろいろな光照射法を検討しました。その中で、高圧水銀灯を用いる方法が、この基質A3には適していることを見いだしました。合成されたA4は光延反応によって二級アミンへ導くことができます。

もっと複雑なポリアミンA5でも、選択的に除去できます。でも、敏感な基質の時にはLED (360 nm) が優れた結果を与えます。今回の論文 [1] は、海洋天然物プロトアーキュレインの合成への適用 [2] にも踏み込んだものです。

参考文献

  1. Miyahara, M.; Shiozaki, H.; Tukada, H.; Ishikawa, Y.; Oikawa, M., Photoremovable NPEC Group Compatible with Ns Protecting Group in Polyamine Synthesis. Tetrahedron Lett. 2018, 59 (48), 4197-4278. (DOI: 10.1016/j.tetlet.2018.10.045)
  2. Shiozaki, H.; Miyahara, M.; Otsuka, K.; Miyako, K.; Honda, A.; Takasaki, Y.; Takamizawa, S.; Takada, H.; Ishikawa, Y.; Sakai, R.; Oikawa, M., Studies on Aculeines: Synthetic Strategy to the Fully Protected Protoaculeine B, the N-Terminal Amino Acid of Aculeine B. Org. Lett. 2018, 20 (11), 3403-3407. (DOI: 10.1021/acs.orglett.8b01331)